Kōhei Yamamoto

Effective Java 第 2 版:第 3 章 項目 11

clone を注意してオーバーライドする

Object.clone は適切にオーバーライドしないと問題が起こるという話。

clone はあるオブジェクトのコピーを返すメソッドである。

例えば、GoF のデザインパターンの一つ、“Prototype” パターンで利用されている。

clone のオーバーライド方法には注意が必要である。 というのは、Object.clone は、デフォルトではオブジェクトのコピーを返さず、CloneNotSupportedException を投げるからである。 インタフェース Cloneable を実装したクラスから Object.clone を呼ぶことで、そのオブジェクトをフィールドごとにコピーしたオブジェクトを返すようになる。

clone に対する一般契約

clone に対する契約は以下の通り。 しかし、必須の契約ではない。

clone の望ましい処理

final ではないクラスで clone をオーバーライドするとき、フィールドが基本データ型もしくは不変オブジェクトならば super.clone を返せばよい。 それなら、最終的には Object.clone() が呼び出され、求めるクラスのコピーが得られる。 例えば、以下のようになる。

public class Circle implements Cloneable {
    private double x;
	private double y;
	private double radius;

    @Override public Circle clone() {
        try {
	        return (Circle) super.clone();
	    } catch (CloneNotSupportedException cnse) {
	        throw new AssertionError();  // 起き得ない
	    }
    }

    //...
}

ここで、返り値型が Object ではなく Circle でよいのは、共変戻り値型であることによる。 つまり、オーバーライドされたメソッドにおいて、戻り値型のサブクラスを使えるからである。

さて、問題はフィールドに配列や参照型などの可変オブジェクトが存在するときである。 この場合に super.clone() を返すだけだと、オリジナルのオブジェクトとコピーの間で可変オブジェクトを共有してしまう。 その結果、一方で変更があると、もう片方にその影響が及んでしまう。

このときは、それらのオブジェクトに対して再帰的に clone を呼び出す。 例えば、以下のようになる。

public class MyQueue implements Cloneable {
    private Object[] queue;
	private int size;

    public MyQueue(int size) {
	    this.size = size;
		queue = new Object[size];
	}

    @Override public MyQueue clone() {
        try {
     	    MyQueue result = (MyQueue) super.clone();
     		result.queue = queue.clone();    // 再帰的に clone
     		return result;
     	} catch (CloneNotSupportedException e) {
     	    throw new AssertionError();
     	}
    }

    //...
}

ちなみに、もし可変オブジェクトが final だと、上のような代入ができず、clone の処理がうまく書けない。 この場合は final を外す必要があるかもしれない。

最後に、継承されるように設計したクラスについては、そのクライアントに clone をオーバーライドするか否かの選択肢を残すため、Object と同様に、protected clone() をオーバーライドしておく。

@Override protected Foo clone() throw CloneNotSupportedException {
    //...
}

clone の代替案

clone よりよい方法として、以下のようなコピーコンストラクタか static ファクトリーメソッドによるコピーファクトリーがある。

参考文献

Effective Java 第2版